日本各地に甚大な被害を引き起こした台風19号。
堤防の決壊による浸水などのインフラ災害だけでなく、多数の死傷者・行方不明者が出る人的被害をもたらしています。
目立つのが阿武隈川や千曲川などの河川氾濫で、これによる堤防の決壊や冠水は各地で大きな水害をもたらすことになりました。
都市部でも「バックウォーター現象」による浸水被害が深刻になっており、一部のマンションでは浸水によって電気系統が動かなくなり、生活が困難になっているケースもあるといわれています。
今回はそのバックウォーター現象によって起こったマンション被害と考えうる予防策、必要だと思われる防災グッズについて考察してみたいと思います。
多摩川で起きたバックウォーター現象
今回の台風19号がもたらした豪雨によって東京都にある多摩川の水位が上昇。
本来は支流である平瀬川の水が流れ込めずに逆流したため、そこから川の水が氾濫して駅周辺の浸水やマンションへの浸水があったといいます。
多摩川が氾濫 バックウォーター現象とは?/日テレNEWS24
さらに多摩川の水位が上がったため、本来なら川に雨水を流すための排水管から水が逆流し、地域への浸水被害に至ったということ。
バックウォーターについての定義を過去記事から抜粋してみますと、
・河川の合流地点で本流が増水することで支流の水がせき止められ、溢れた水が氾濫してしまう
・行き場を失った支流の水が堤防を越え、堤防が決壊するなどの浸水被害をもたらす
・川が合流する地点だと、全国どこでも発生する可能性あり
のようになっています。
いわばバックウォーター現象は郊外の河川だけでなく、今回の台風でも分かるように、都市部の川でも起こりうる水害です。
対策としては「川の中に堤防を作って、本流と支流の流れを仕切り、合流点を下流に移動させたり、本流の川幅を広げて水を流下させる能力を増やすこと」が有効とされており、実際に私の住んでいた街では、10数年前に近郊の川が氾濫を起こして周辺地域に冠水や浸水をもたらしましたが、行政が大規模な川の改造と堤防工事を行った結果、その後は一度も氾濫が起きていません。
このときも本流の増水によるバックウォーター現象が原因でしたが、今回のような大規模な台風が頻発する近年では、過去の対策は今後も通じるかは予測がつきません。
さらに深刻なのが、バックウォーター現象が起こることによって、都市部にあるタワーマンションなどの高層住宅が機能不全に陥ってしまうということ。
先ほどのニュース記事では、
とあり、昨晩見たNHKクローズアップ現代でも、実際にそこに住む人の深刻な状況を見て「これはもうしばらくは住めないだろうな」と感じました。
最も深刻だったのは「電力の停止」。
浸水によって電気が止まってしまうと、水道が通じなくなるばかりか、エレベーターが使えなくなります。
高層マンションではこれはかなり致命的です。
では実際の高層タワーマンションが受けた実際の被害はどのようなものだったのでしょうか?
タワーマンションの浸水被害と対策・防災グッズについて
タワーマンションなどの高層住宅では電力の供給が止まってしまうと、照明や調理器具の電源、生活に必要な水道の供給もストップしてしまいます。
さらに深刻なのがエレベーターが使えなくなることで、高いフロアに住んでいる人は階段で上り下りしないといけなくなります。
私が昔住んでいた高層マンションで火事が発生した時にエレベーターが緊急停止し、避難するときに住民全員が非常階段を使って降りなければならない事態が発生しました。
高齢の方は大変だったようで、そういった多くのご家庭がどうしても避難の歩みがゆっくりになるのは仕方がありませんでしたし、私も足が不自由だった祖母を背負って階段を降りていきました。
このときは火災による緊急避難だったので、エレベーターの停止はあくまで一時的なものでしたが、これが浸水による電力の停止となると復旧の見通しはなかなかつかなくなります。
先ほどのNHKの番組の中でも、タワーマンションの住人の方は「水が出ないのでトイレが大変」「調理ができない」「階段を上り下りするのがしんどい」などの悩みを吐露されておられました。
特に「大変だろうな」としみじみ感じたのが「階段の上り下り」で、買い物や通勤のために一日何度も長い階段を上ったり下りたりするのは、想像するだけでもそのしんどさが伝わってきます。
そのためか勤務場所近くのホテルに避難したり、実家に帰ったりする住民も多いようです。
マンションの電気設備は地下にあることが多いので、浸水した際にはどうしても被害が出てしまうのは避けられません。
ではどうやったら非常時に少しでも被害を最小限に食い止められるのか?
ここでは短期と長期の2種類の対処法を考えていきます。
短期間の対処法
電気の復旧の目途が短期間でつく場合には、多少の不便を我慢してでも住み続ける、という選択肢は十分にありです。
その際にクリアしなければならないのは、生活物資の有無ですが、これも備蓄があれば何とか凌げると思います。
電気が供給されない間は水や火を使った生活が難しくなるので、それに対応した防災グッズを普段から揃えておくとよいと思います。
以下に必要だと思われる対策グッズ一式を挙げておきます(レビュー記事へのリンクあり)
・非常食料
・キッチン用ラップ
・紙皿/紙コップ
・常備薬
・救急用品
・生理用品
・ラジオ
・消火器
・ビニール袋/ゴミ袋
・ドライシャンプー(シャンプー手袋)
・バケツ
・使い捨てカイロ
・寝袋
・粉ミルク、おむつ(⇒赤ちゃん用の防災グッズ)
・ペットのえさ、ゲージ(⇒ペット用の防災グッズ)
これに加えて、保冷剤を臨時の冷蔵に使う方法があります。
冷凍庫に入れておいた保冷剤を、電気が止まった時に上の冷蔵庫に移し替えて食品保存に使います。
アウトドア用の保冷剤は保冷力も高いので、普段から用意しておくと、いざという時に役立ちますよ。
⇒保冷剤を使って冷蔵庫の食材を守ろう!災害で停電になったときの対処法
次に最大の懸念要因である「エレベーターの故障」への対応です。
これは住民にはどうしようもないので、管理側の対処による復旧を待つしかありません。
復旧が短期間で済むことが分かっている場合は、上記のような対策アイテムでやり過ごしつつ、通勤や買い出しも階段を使うことになります。
問題は中・高層階以上に住んでいる人の場合です。
短期間とはいえ、生活するためや通勤・通学のための毎日の階段の上り下りは大変です。
10階以上のフロア住まいだと、その労苦は想像以上のものになります。
もし低層階に住んでいても、高齢者であったり、病気や怪我をしている人、子供さんや妊婦さんがいる場合には、他の場所に仮住まいできる場所があれば、そこに移るのが最良の選択です。
ご実家や信頼できる友人・知人宅を頼るか、ホテルでの仮住まいなどを検討しましょう。
電気復旧まで短期間で済む場合
・防災グッズで対応する
・低層階に住んでいる場合は、階段で行き来する
・体が弱っている人がいる場合は、できるだけ他の住居に移る
・中・高層階に住んでいる場合は、他の住居に移ることを検討する
長期間の対処法
住んでいるマンションの電気の復旧の見通しがつかない場合は、基本的にはそこに住み続けるのは困難だと考えられます。
まずもって、毎日の生活の不便さが大変だということ。
電力が通らないということは、水道も電気も調理も使えない状態なので、長期間に渡る防災グッズのみでの生活は無理でしょう。
10階未満のフロアに住む場合なら、不足した生活物資の買い足しは階段で行き来することも可能ですが、それでも長期間に渡って毎日それに耐えられるかはかなり疑問です(私なら3日で根をあげる自信があります)
中・高層階以上に住む人の場合は、もはや論外。
20階とか30階の階段を毎日上り下りするのは、想像するだけでも酷すぎますから。
実際にNHKの防災番組でインタビューされていたタワーマンションのご夫妻は、取材の後、それぞれのご実家に居を移されていましたので、それが最良の対処法だと思います。
電気復旧まで長期間かかる場合
・他の住居に移ることがベスト
まとめ
高層タワーマンションは、地震や台風などによる建築構造上の問題はおおむねクリアできていると言われています。
以下のサイトでも詳しく述べられていますが、一番問題になるのは、やはり電気。
その中で個人で対応できるケースは限られますが、過去の自分の住居環境を想定しながら記事内で提示させてもらいました。
ほかにもマンションの自治会や管理組合は、災害時にけが人や病人が出た時にエレベーターが電気の不通で使えないことを想定して、階段を昇降できる車いすの充実を進めることも大切です。
同じく心肺停止などの緊急事態も想定して、AEDの設置も普段から怠らないでおきたいものです。
今回の台風19号レベルの災害は、今後は頻繁に日本列島を襲うものと考えられます。
そのときが来ても対処できるように、普段からの防災アイテムの備蓄や避難する際のハザードマップの確認など、個人でできることは多くありますが、マンション住まいの場合の電気インフラ対応に関しては、なかなか難しいのが現状です。
短期間と長期間の2つに分けて対応策を考察してみましたが、あくまで想定にしかすぎません。
実際の被災の際には、できうる限りの情報を集めて、周囲と協力しながら対応していきましょう。
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