防災と災害について考えるブログ

防災情報や防災用品のレビュー、災害の実体験を綴っていきます

地震で倒壊した建物からの救助法と必要な道具とは?


震災が発生して最も恐ろしいのが、家屋が倒壊してその下敷きになることです。

多くの震災地で建物の倒壊による死傷者の割合が高く、内閣府の発表した地震における「被害の概要」でも、「阪神大震災における死傷者の80%が建物の倒壊によるものである」と明記しています。

 

警察庁発表資料(4月11日現在)によると,死因の90%以上が溺死となっている(図1−1−4)。なお,阪神・淡路大震災においては,死因の80%以上が建物倒壊によるものであった。

2 被害の概要 : 防災情報のページ - 内閣府

 

このように建物の倒壊による犠牲者の数は全体の中でもかなり高いことが分かります。

実際に阪神淡路大震災の当時も、現地で多くの方が家屋の倒壊により亡くなられたのを見聞きしてきました。(⇒体験談

このような震災時の家屋の倒壊から人々を救うためにはどうすれば良いのか?

人命救助の専門家でもない、一般の素人が現地でできる範囲のレベルの救助方法を、私自身の体験談を基に考察していきたいと思います。

 

震災による家屋倒壊の実際の状況とは?

 

基本的には、専門家でない人間が行うべきではないと思います。

常識的に考えても、救助に必要な訓練も道具も備えていない素人が、しかも災害時で必要な物資がただでさえ足りていない状況で、倒壊した家屋から人を救うというのは非常な困難を伴うどころか、逆に倒壊に巻き込まれて死傷者を増やしてしまう危険があります。

 

 

かといって、消防隊や警察、自衛隊の到着を待っているのでは、救助が間に合わない場合もあります。

倒壊した家屋での死因の多くは窒息死であったり、倒壊の衝撃による外傷であったり、内臓の損傷による死傷、または先ほども述べた通りに「火災」に巻き込まれての焼死であったりするために、救出には一刻を争います。

たとえ専門家による救助が最も効果的だとは言え、その到着を待っているだけでは、目の前で命を失なうことになりかねません。

自治体の防災の講習に出たことがありますが、その席でも震災による家屋の倒壊が発生した場合は、救助の到着を待たずに、可能な限りの救援活動を行うべきという話が出席者や専門家の間から出ていました。

私自身の体験でいえば、阪神淡路大震災の時には自宅はもちろん、周辺地域の家屋はおおむね全壊してしまい、まるで空襲に遭ったような悲惨な状況を呈していました。

もちろん多くの人が倒壊した家屋の下敷きになっていました。

こうした状況下の中、道路網などのインフラなど全く機能しない状態、救助隊の到着などまるで覚束ない状態でできることは、自分たちでそうした人々を救い出すことしかありません。

そうして始まった救助活動ですが、もちろんそのすべてに私が参加できたわけではありませんでした。

当時は学生だったこともありますし、なによりそういった知識は皆無だったので、ご近所の自治会の方々や、消防団の方のサポートとして、わずかながらですが、倒壊家屋の救助活動を手伝わさせて頂きました。

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上記の記事で書いた救助体験や、別の近隣住民の方の救助活動を手伝わせてもらったことがあります。

災害地で一般人に何ができるのか?

そのことを次の章で実体験を元に考察させてもらおうと思います。

 

倒壊家屋での救助活動

 

私が携わった事案の一つを具体的に紹介します。

1階部分が完全に倒壊した2階建ての家屋からの救助活動です。

これは親戚の家だったのですが、その家の主人(叔父にあたります)がちょうど前夜に一階で寝ている状況の中で、地震の発生で屋根が崩れ落ちてしまい、倒壊した一階部分に閉じ込められた形になっていたようです。

よく助かったなと、当時も今も思いますが、後で聞いてみると、ちょうど洋服タンスの手前にあるソファで寝ていたために、倒壊時にはその洋服タンスが崩れ落ちてきた天井を支える形になって、その下にいる親戚を保護したようです。

しかし一階部分全体が倒壊しているために、わずかな隙間から逃げ出さなくてはならず、高齢だった親戚の男性では自力での脱出は難しく、さらに床は倒壊時の衝撃で凸凹になっていたり、割れたガラスや建物の破片が散らばっていたため、歩行すら危険な状態にありました。

こういう形で近所の皆さんと力を合わせて救助することになったのですが、その際にまず率先して中に入って確認に行かれたのが、少年時代に空襲の経験があったご近所のおじさんでした。

昔とった杵柄というわけではないでしょうが、恐れもなく倒壊してぱっくり開いた2階部分の窓から堂々と入って行かれた姿には、正直「おお・・」と感動してしまいました。

そうして中の状況を確認され、声をかけて親戚の無事の声を聞くと、再び外に出てこられて中の状況を周囲の方たちに報告して対応を話し合っておられました。

しばらくして救助法が決まったのか、どこからかロープを持ってこられ、さらにジャッキと廃材のようなものも併せて用意して、皆で救い出すことになりました。

先導していたのは、先に入った方で、ロープを腰に巻いて「おーい!」と声をかけながら、中に入っていきました。

 

 

続いてそのロープを掴みながら、別の方が2人ほど中に入っていきます。

そのときにジャッキと廃材を手にして奥に入っていくのが見えました。

私は残った人たちとその様子を外で眺めていましたが、やがて「引き上げるぞ!」という大声が聞こえたので、急いで窓の部分に駆け寄っていき、入り口で待機していました。

しばらくして先導の方に抱えられて寝間着姿の親戚が姿を現したので、私は急いで窓に昇って肩を貸すと、そのままゆっくりと親戚と一緒に地面に降り立ちました。

続いて救助に行かれた方々が出てこられ、なんとか救出活動は終了。

無事に助け出して頂いて、親戚の家族は泣いて喜んでいました。

このとき私がしたことといえば、外でロープを数人でもって保持していたこと、親戚が出てきたので肩を貸して外に出したことの2つに過ぎなかったのですが、初めての経験であり、かなりドキドキしながら無事を祈っていたことを今でもよく覚えています。

後に助けに入って頂いた方々にお礼を述べた後、詳しい救助の内容をお聞きしました。

外の明かりがうっすらと入る状況なので、中はあまり視覚が利かず、かなり危険な状況だったようですが、ロープが命綱代わりになっていたので、なんとか倒壊物が散乱して傾く床部分を歩くことができたということ。

そしてタンスの間に挟まっている親戚を助ける時に、タンスとソファの間の狭い隙間に廃材を挟み込み、ジャッキで少しづつ押し上げていって隙間を広げていって、逃げ出せるほどの空間を作り出してから、引っ張りだしたということでした。

このときは最も緊張したらしく、下手にジャッキで倒壊物を持ち上げていくと、それまで曲がりなりにもバランスを保っていた建物が、何かの拍子で一気に倒壊する恐れもあったために、「ゆっくり、ゆっくりとな」と声を掛け合いながら、慎重に慎重に作業を進めていったようです。

こうして近所の方々の勇気ある行動のおかげで親戚は助かり、親戚家族は無事の再会を涙を出して喜ぶことができました。

 

救助活動で分かった「必要なもの」 

 

救助活動で体感したことは、やはり倒壊直後の非常時には皆で力を合わせて誰かを救い出さなくてはならない、ということです。

震災直後には消防隊も自衛隊も警察も来ません。

たとえ到着しても、周辺のインフラが改善する3日後あたりが関の山だと思います。

それまでには、たとえ危険だとしても、誰かが困っている人や動物を救い出さなくてはならない。

そのためには、まずは勇気を振り絞って救助活動に参加する気持ちが必要ですし、そのための道具も必要です。

具体的な道具としては、先ほどの救助活動で使ったジャッキ、ロープ、廃材は、かなり役に立つと思いますし、実際の防災講習でもジャッキの必要性は取り上げられると思います。

ジャッキに関しては、車に乗る方は常備されていると思いますが、そうでない方はご家族やご近所の方が倒壊した家屋に巻き込まれた際のことを考え、可能な限り普段からご用意されておくことをお勧めします。(ホームセンターやオートバックスでも必ず置いていますし、近隣になければネットでも販売しています)

ロープについてですが、これも可能であれば用意しておいたほうが便利な防災用品であることは間違いありません。

救助活動だけでなく、脱出の際にも役立ちますし、避難所で自分のテリトリーを確保するために四方に張り巡らす用途にも使えます。

幅広い用途を有するグッズですので、これもぜひとも普段から常備しておきたい防災用品になります。

最後の廃材ですが、これは災害現場であれば、たいていは転がっているものを使用すればよいと思います。

ただ近隣の家屋からのものを使用してしまうと、後でトラブルにならないとも限らないので、可能であれば、ホームセンターなどで類似の商品を購入しておくのもありだと思います。

そのほかにもより専門家が使用するタイプに近いレスキューセットなどがあり、こちらも近隣の方の救助活動だけでなく、自分や家族の安全にも役立つことかと思いますので、予算や保管場所に余裕があれば、揃えておきたい装備品の一つかと思います。

そして最も大切で基本的な装備品が「靴」と「手袋」です。

これがない無いと建物内の倒壊した建築材やガラス片などで手足を傷つけてしまう恐れがあります。

傷ついた手から雑菌がはいって破傷風になることもあるので、医薬品の限られた災害地では文字通り命取りになってしまいます。

「耐切創手袋」や、作業用シューズがあれば、より安全に救助活動を行うことができるので、普段から災害備蓄用のリュックなどに常備しておきたいものです。

あとはLEDヘッドライトがあれば、暗所でも頭部に装着するだけで、両手がふさがることなく自由に作業することができるので、こちらも揃えておきたい防災グッズの一つですね。

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まとめ

 

その後、救助していただいた方々と、屋外駐車場で皆で輪になって、近くに散乱していた廃材を燃やしてたき火を作り、誰かが持ってきた鍋に水を入れてお湯にしてコーヒーを飲みながら、それからのことを語り合ったことがとても懐かしく思い出されます。

それまで口も聞いたことがなかった年配の方と、人生について語り合う。

震災直後という非常時ながら、ひとときの至福の時間を持てたような貴重な体験でした。

その一方で多くの方が亡くなられていたり、被害に遭われたりされていたので、手放しに「至福」という言葉を感じることは状況には全くふさわしくないのでしょうが、震災後の大変な時期ということもあり、少しでもほっとする時間を持てたことは、気持ちを整理するうえでも必要なことだったのかなと今では思います。

加えて感じたのが、自分の未熟さということ。

救助のほとんどを人任せにしてしまい、自分はサポート程度しかできなかったことが、今でも時々悔やまれます。

それによって誰かの命が失われたということはないのですが、やはりこうしたときに率先して活動に参加できる、できないという差は、歴然として自分の中に残ります。

そのためには普段から、防災の知識や体験を蓄えておくこと。

専門家でもない人間が、緊急時に必要な行動を適切に行うためには、やはりそうした防災への取り組みを普段から心がけておくことが重要だと思いますので、またこれからもこまめにチェックしていきたいと思います。